このページの要点
- 個別相談を経て申し込む講座では、記載事項と様式が法令で決まった契約書面(赤枠のクーリング・オフ付き)が加わる。
- 規約に全部まとめても、受講者ごとの事項と赤枠の様式が必要な契約書面は兼ねられない。
- 期ごとに条件が変わる講座は、共通の契約書と募集要項に分け、同意した版を証明できるようにする。
- 表記・規約・契約書・販売ページ・申込画面で、価格と返金条件を一致させる。
結論:必要な書類は売り方で決まり、「渡す」「公開する」「社内で使う」の三つに分かれる
オンライン講座に必要な書類は、受講規約・プライバシーポリシー・特定商取引法に基づく表記の三点だけ、と考えられがちです。この三点は、販売ページから受講者が自分で申し込む通信販売の講座なら、たしかに中心になります。しかし、Zoomの個別相談で受講を勧めて申し込んでもらう講座では、受講者に「渡す」書類として、法律が記載事項と様式を決めている契約書面が加わります。自社で分割払いを受ける講座では、割賦販売法の書面も加わります。どの書類が必要かは、講座の名前や内容ではなく、売り方で決まります。
もう一つ大切なのは、書類を役割で分けて考えることです。アトラス行政書士法人がSNS運用講座の主催者に納めた書類一式は、①受講者に渡す・公開する書類、②社内で管理する書類、③説明用で確認後は使わない書類、の三つのフォルダに分けました。受講者と交わすのは実質的に受講契約書と支払受領の通知の二つで、規約・プライバシーポリシー・表記は掲載して見られる状態にしておくもの、手順書や台本、入力シートは社内で使うもの、という区分です。売り方の判定そのものはオンライン講座の始め方と取引類型で説明しています。
売り方ごとの書類の組合せ
事務所の判定ガイドでは、講座の売り方を六つの場面に分け、それぞれに必要な書類を表にしています。個別の講座が分からない形に整理し直すと、次のとおりです。
| 場面 | 中心になる書類 | 注意点 |
|---|---|---|
| 販売ページから直接申し込み、一括で払う | 受講規約、プライバシーポリシー、特商法表記、申込み直前の確認画面の表示、前払いなら入金後の承諾通知 | 法定のクーリング・オフはない。表示と規約の一致が中心 |
| Zoomの個別相談を経て申し込む | 上記に加え、受講契約書を兼ねる契約書面(赤枠のクーリング・オフ付き)、必要に応じて申込書面、前払いの支払受領の通知 | 契約書面は記載事項と様式が法令で決まっている |
| 個別相談を経て、自社で分割払いする | 上記に加え、割賦販売法の書面(分割の条件を記載した合意書など) | 割賦販売法の書面と特商法の書面の関係を整理する |
| 個別相談を経て、受講後に仕事を紹介する | 業務提供誘引販売の書面 | クーリング・オフが20日間になり得るため、安全側でその期間を前提に運用 |
| 販売ページからの直接申込みと個別相談経由が併存する | 両方の書類一式 | 受講者ごとに適用が変わる。経路の記録を残す |
| 会場で対面のまま契約する | 訪問販売の申込書面・契約書面 | 会場が営業所等に当たるかを確認 |
販売ページと個別相談を併用する講座は多く、判定ガイドでは「書類一式を備えておくのが安全」と注記しました。
申込書面が要るかどうかは、運用の一点で決まります。申込みを受けたその場で契約を成立させる(たとえば事業者が先に署名した契約書に受講者が署名した時点で成立する)なら、契約書面の一通で足ります(特定商取引法18条1項ただし書)。申込みを受け付けた後で事業者が確認して承諾する流れなら、申込書面と契約書面の二通が必要です。この点はヒヤリングで確定させ、書類の数を決めます。契約の成立の時点と書面の渡し方は契約の成立と書面の渡し方で詳しく説明しています。
「規約に全部まとめれば足りるのでは」への答え
書類を減らしたいという依頼者からは、「規約一本にすべて書けば済むのではないか」という質問を必ず受けます。事務所の判定ガイドでは、次の四つの理由で、規約だけでは足りないと回答しています。
- 申込書面・契約書面には、受講者ごとの事項(契約の締結を担当した者の氏名、契約の締結の年月日など)と、赤枠・赤字・8ポイント以上の文字という様式が必要で、全員共通の規約では兼ねられない(特定商取引法施行規則45条・46条・47条)。
- 特商法表記を規約の末尾に入れると、申込みの前に受講者が見つけにくくなる。返金・解約の条件は見やすい箇所に表示する必要がある(同規則24条3号)。
- プライバシーポリシーは、契約前の相談予約者の情報も対象になるので、契約前から見られる独立の文書にしておく。
- 書面を交付しなければ、クーリング・オフの8日間が始まらず、相当の期間がたってからクーリング・オフを主張される。
営業キャリアのスクールに向けた作成方針の案内では、この違いを具体的な場面で比べました。一定額・6か月の講座を3か月で解約された場合、規約だけで法定の書面がないと、クーリング・オフの期間が始まっていないため全額の返金を求められ得ます。規約に加えて記載事項のそろった受講契約書を渡していれば、契約書で定めた精算のとおり、提供済みの分などを差し引いて返金することになります。この差額は、一人の受講者だけでなく、同じ時期に契約した受講者全員に共通して生じます。
渡す書類・公開する書類・社内で使う書類
SNS運用講座の書類一式は、最初の納品では13点ありましたが、標準の流れで受講者に実際に使うのは受講契約書と支払受領の通知の二つだけ、と図解ガイドで示しました。その後の版では、普段使う書類と、特定の場合だけ使う書類に整理し直しています。
書類の区分(SNS運用講座の書類一式から)
普段使う
受講者に渡す・公開する受講契約書(契約書面を兼ねる)、受講規約、プライバシーポリシー、特商法表記、前払いの支払受領の通知
社内で管理する契約書面の交付の手順書とチェックリスト、個別相談の台本、運用マニュアル
特定の場合だけ使う
受講者に渡す・公開する申込書面(受講者が先に「申し込みます」と書いてきた場合)、クーリング・オフ通知の参考様式(求められたときだけ)、支払催告の書面
社内で管理する申出があったときの対応メモ
期ごとに書き換えるもの
受講者に渡す・公開する受講契約書の記入欄(提供期間・受講料など)
社内で管理する色分けした編集用の雛形、期ごとの値をまとめた入力シート、受講者の台帳
受講契約書は、規約を綴じ込まずに掲載と契約書第1条での組入れによって契約内容にし、請求があれば遅滞なく交付する方式にしました。
規約を綴じ込まない方式を採るときに注意したのは、契約書面の記載事項です。契約書面には、契約の解除に関する定めがあればその内容を書かなければならないので(施行規則45条8号)、返金・解約の定めを規約にだけ書いて契約書に書かないと、記載が足りないと主張されます。そこで、規約と同じ内容を契約書の本体にも書き、規約を変えたら契約書の施行日の欄と台帳の版も直す、という手順を手順書に入れました。なお、すでに契約した受講者に変更後の規約を知らせる必要があった期には、規約を綴じ込んだ形の契約書を使っています。
期ごとに書き換える雛形は、色で役割を分けて納めました。自由に書き換えてよい箇所、規約・表記・募集ページの記載と連動して直す箇所、法定記載事項で勝手に変えない箇所、の三色です。期ごとに変わる値は入力シート一枚にまとめ、各書類にその項目番号を表示して転記漏れを防ぎます。前の期の値を流用したまま送らず、新しい期の最初の一件を試作してから使う、という一文も運用マニュアルに入れました。
共通の契約書と、期ごとの募集要項
期ごとに日程や価格、特典が変わる講座では、そのたびに契約書を作り直すのは現実的ではありません。期ごとに募集するSNS集客講座の修正では、基本となる契約書は共通にし、期ごとに変わる条件は募集要項として申込みの画面で示し、契約の一部にする方式を採りました。契約の内容は当事者の合意で決まるので、このような組み方自体は可能です(民法522条)。ただし、有効に機能させるには三つの条件があると説明しています。
共通の契約書+募集要項方式を機能させる条件
- 申込みを確定する画面に主要な条件を表示し、契約書と募集要項の両方を確認して同意してもらうこと。
- どの版の契約書と、どの期の募集要項に同意したかを、後から証明できること。承諾メールに両方のPDFを添付し、受講終了から5年保存する。募集期間中に要項を変えたら、変更前の版と表示期間も残す。
- 食い違ったときの優先関係を決めておくこと。個別条件として定めた項目は募集要項で決め、それ以外は受講者に有利な場合に限り募集要項が優先する。
三つ目の条件は、募集ページの文言が返金や免責のルールを意図せず受講者に不利な方向へ書き換えてしまうのを防ぐためのものです。募集要項で決めてよい個別条件は12項目に絞り(受講料、受講期間、講義回数、支払期限、開始前の解約手数料の額など。開始前の解約手数料は受講料の一定割合を上限とした)、返金や免責を不利に変えるときは契約書の改訂が必要、という区分表も付けました。インスタライブなどで口頭で伝えた特典も、必ず募集要項に書くよう助言しています。口頭の約束は、書面にない分だけ争いのもとになるからです。
確認書・説明資料・運用マニュアル
法律が求める書類のほかに、事務所が作ることが多いのが、受講者に条件を確認してもらう書面と、社内で手順をそろえるための書面です。投資教育講座では、依頼者が「法定交付書面」と呼んでいた書面を「重要事項確認書」に改名しました。通信販売には書面の交付義務がなく、投資教育は特定継続的役務の7業種にも入らないので、「法定」と呼ぶと事実と違う説明になるからです。確認書の働きは、消費者契約法による取消しの主張への反証、金融商品取引法との線引きの証跡、誇大な広告の規制への対応、紛争のときの立証、と整理しました。確認書と契約書の内容が違えば契約書が優先する、とも明記しています。
Instagramのコンサル講座では、契約書とは別に、講座生向けの「受講にあたっての大事なお約束」という4ページの簡易説明資料を作りました。金銭と解約の話だけでは受講者が知っておくべきことを伝え切れないため、契約書の全条を洗い出し、サポートの内容、禁止行為と解除、コンテンツと録画、個人情報まで含める構成にしています。「この資料に書いていないことは受講規約の本文を確認してください」という注記を入れ、資料が規約の代わりと受け取られないようにしました。
電話で勧誘して入会してもらう投資スクールでは、依頼者が使っていた契約書を改訂する際に、確認書を契約書の本体から切り離して独立させ、電話勧誘販売用の申込書面を新しく設けました。確認書の項目は、冒頭の告知を受けたこと、勧誘の目的を隠されなかったこと、断定的な説明がなかったこと、貸金業者からの借入れを勧められなかったこと、など13項目です。あわせて、期間の限定のない競業避止と、損害の立証なしに高額を払わせる違約金を削り、1年分を一括で請求する定めは実際の損害の賠償に改めました。書類を増やすだけでなく、書類の中の無効になりやすい条項を同時に整理するのが、改訂の基本です。
運用マニュアルは、書類どおりに運用されて初めて書類が働く、という考えで作ります。SNS運用講座の統合運用マニュアルでは、最初に覚える三つのこととして「契約が成立する前に決済へ案内しない」「契約書の郵送は入金を待たない」「解約などの申出はすぐに事業主へ共有する」を挙げました。クーリング・オフの期間は書面の受領日から数え、署名日・発送日・決済日では数えない、日付が分からなければ「要確認」として申出を拒まない、といった判断の基準も、担当者が迷わない形で書いています。勧誘時の確認書や台本についてはZoom個別相談・無料セミナーと電話勧誘販売で触れています。
書類どうしを一致させる
書類がそろっていても、書類どうしで中身が食い違っていれば、受講者に有利な方で読まれるか、表示の義務違反を問われます。営業キャリアのスクールへの作成方針では、基本方針の一つに「数字をすべて一致させる(規約・契約書・表記・販売ページ・申込画面)」を掲げました。SNS運用講座への回答書では、返金の条件をそろえる場所を、販売ページと広告、表記、申込み直前の確認画面、規約、申込完了の通知の5か所と特定しています。
事務所の改訂例 書類の食い違いを直した例
表記の返金欄
表記だけを見た受講者に、事実と違う条件を示すことになるためです。
修了後のコミュニティ
審査資料が無期限の役務を約束したように読まれるのを防ぎます。
価格
請求しない金額を現在の受講料のように見せるのは正確な表示とはいえません。
成立の時点
成立の時点は、クーリング・オフや承諾通知の起点にもつながります。
同じ作成方針の案内では、ほかに四つの基本方針を示しました。一つ目は、有事に効くこと(受講者と揉めた日に、条文だけで結論が出る書き方にする)。二つ目は、規約と受講契約書の二層の構造にし、食い違ったときの優先順位を決めておくこと。三つ目は、複数のプランがある講座では、プランごとの違い(期間・回数・サポートの範囲・受講料・返金の扱い)を一つの表で比べられる形に書くこと。四つ目は、受講者が読んで分かる平易な言葉で書くことです。とくにプランの比較表は、表記・販売ページ・契約書の別表で同じものを使うと、食い違いが起きにくくなります。
投資教育講座の関係書類の説明では、受講契約書・利用規約・特商法表記・重要事項確認書の四つについて、受講料、返金の条件、サポートの対応時間がそれぞれどの条に書かれ、同じ内容になっているかを一覧にし、運営側が変更のたびに使うチェックリストを付けました。一か所を直したら残りも直す、という作業を、担当者の記憶ではなく表で管理するためです。
依頼者の意向で、法律上の最低ラインは守りつつ書き方を変えることもあります。SNS運用講座では、途中解約を案内したり勧めたりしているように見せたくない、という依頼者の希望を受けて、精算の計算式を契約書の本文から別の箇所に移すなど12か所を調整しました。その際、各項目に「本来の記載」「現在の記載」「リスクの高さ」「対策」を並べた一覧を付け、とくにリスクの高い項目を明示しています。クーリング・オフの赤枠、「解約できない」と書かないこと、解除の定めの中身、勧誘時に事実を告げること、の四つは、どの意向があっても外せない線として残しました。
依頼者から一つのファイルで原案を受け取った場合でも、成果物は書類の種類ごとに別のファイルに分けています。規約と特商法表記とプライバシーポリシーは、掲載する場所も、受講者が見る時点も、変更の手続も違うからです。表記の書き方は特商法表記と最終確認画面、契約書面の中身は契約書面とクーリング・オフの赤枠、プライバシーポリシーの書き方はコミュニティ・録画・個人情報、規約の一般条項は受講規約・受講契約書の条項Q&Aで説明しています。
ヒヤリングの問いと理由 書類の数と区分を決めるとき
個別相談を経由する人と、販売ページから直接申し込む人の両方がいますか。
両方なら二系統の書類が必要になり、経路の記録も要ります。
申込みを受けたその場で契約を成立させますか。受付の後で承諾しますか。
申込書面が要るかがこの一点で決まります。
期ごとに価格・日程・特典が変わりますか。
共通の契約書と募集要項の組み方を検討します。
書類の作成・送付・保存を担当するのは誰ですか。外部スタッフも関わりますか。
手順書と台帳の作り方、担当者の氏名欄の扱いが変わります。
決済代行の審査に出した資料や、販売ページの文言は手元にありますか。
書類との食い違いを最初に洗い出すためです。
起きがちなこと
よくあるご質問
オンライン講座に最低限必要な書類は何ですか。
販売ページから受講者が自分で申し込む通信販売なら、受講規約、プライバシーポリシー、特商法表記、申込み直前の確認画面の表示が中心です。Zoomの個別相談で勧めてから申し込んでもらうなら、記載事項と様式が法令で決まっている契約書面(赤枠のクーリング・オフ付き)が加わります。
受講規約に全部書けば、契約書面は要りませんか。
要ります。契約書面には受講者ごとの事項と、赤枠・赤字・8ポイント以上という様式が必要で、全員共通の規約では兼ねられません。書面を交付しないと、クーリング・オフの期間が始まらないという問題も残ります。
期ごとに価格や日程が変わる講座は、契約書を毎回作り直す必要がありますか。
共通の契約書と期ごとの募集要項に分ける方法があります。申込みの確定画面で両方に同意してもらうこと、どの版に同意したかを証明できること、食い違ったときの優先関係を決めておくこと、の三つが条件です。
申込書面と契約書面は両方必要ですか。
申込みを受けたその場で契約を成立させる運用なら契約書面だけで足ります。申込みを受け付けた後で承諾する流れなら両方が必要です。どちらの運用にするかを先に決めると、書類の数が決まります。
受講者に確認書を書いてもらえば、法定の書面は要りませんか。
確認書は、説明を受けたことや条件を理解したことの証拠として役立ちますが、法律が求める書面の代わりにはなりません。電話勧誘販売に当たる講座では、確認書とは別に契約書面を交付する必要があります。
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本ページは一般的な情報提供です。事務所の改訂例・ご相談の事例として紹介している内容は、アトラス行政書士法人が作成・レビューしてきたオンライン講座の受講規約・受講契約書、電話勧誘販売の契約書面・申込書面、特定商取引法に基づく表記、プライバシーポリシー、分割払いの合意書、講師・運営スタッフの業務委託契約書、講座の構築・運用の受託契約などを、個別の事業者や講座が特定できない形に整理したものです。条文は e-Gov法令検索で確認しています(最終確認日:2026年10月16日)。裁判例は、事務所の報告書・回答書で検討したものを、判決日と要旨とともに紹介しています。参考: e-Gov法令検索 / 特定商取引法ガイド(消費者庁) / 個人情報保護委員会 / フリーランス法特設サイト(公正取引委員会)