受講規約・受講契約書の条項Q&A

一般条項は、無効にならない形で書いたものだけが、受講者と揉めた日に働きます。

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「故意・重過失を除き責任を負いません」は、軽い過失なら全部免除と読めるため、消費者契約法8条1項により無効となり得ます。

このページの要点

  • 賠償の上限は、上限を定める一文の中に故意・重過失の除外を書き込む(消費者契約法8条3項)。
  • 成果を保証しない条項だけでは、広告や個別相談の断定的な説明による取消しは防げない。
  • 解除事由は具体的な違反行為で書き、是正できる違反には催告と是正の機会を置く。
  • 規約の変更は民法548条の4の要件と周知を守り、未成年者の同意は契約の成立の要件に組み込む。

結論:受講規約の条項は、無効にならない形で書いたものだけが紛争の日に働く

受講規約や受講契約書の後半には、損害賠償の制限、成果を保証しない旨、解除や利用停止の事由、規約の変更、管轄の裁判所といった「一般条項」が並びます。雛形から写しやすい部分ですが、消費者を相手にする講座では、書き方を一つ誤るだけで条項が無効になり、事業者を守るはずの条項が逆に事業者の説明の矛盾を示す証拠になることがあります。アトラス行政書士法人が作成・点検した受講規約では、「当社は一切の責任を負いません」「当社が不適切と判断した場合は解除し、返金しません」「事業者の所在地の裁判所を専属的な管轄とします」といった条項を、繰り返し書き直してきました。

このページでは、依頼者からよく受ける質問の形で、一般条項の書き方を説明します。返金・中途解約の条は返金規定・中途解約の精算、教材の権利や違約金は教材・ノウハウの保護、医療や心理との線引きはコーチング・個別セッション型講座の開業で扱っています。

「当社は一切の責任を負いません」と書いてよいですか

書いても、その条項は働きません。消費者契約法は、事業者の債務不履行や不法行為による損害賠償の責任の全部を免除する条項を無効とし(消費者契約法8条1項1号・3号)、故意又は重大な過失による場合の責任の一部を免除する条項も無効としています(同項2号・4号)。よく見かける「当社の故意又は重大な過失による場合を除き、責任を負いません」という書き方は、軽い過失なら責任を全部免除すると読めるため、同項1号・3号により無効となり得ます。家計管理サービスの依頼者原案にあった「故意又は重過失がある場合に限り賠償する」という条項も同じ問題を抱えていたため、過失一般について責任を負う形に戻しました。

責任の上限を定めること自体は可能です。ただし、軽い過失の場合の一部免除の条項は、「重大な過失を除く過失による行為にのみ適用されることを明らかにしていない」と無効になります(同条3項)。よく見かけるのは、上限を定める項と、故意・重過失を除いて逸失利益などの責任を負わないとする項を一つにまとめ、上限の側に限定の言葉がないまま、末尾に「法令により責任を制限できない場合には適用しない」という一般的な留保を置く書き方です。同項は、上限を定める「当該条項において」軽過失に限ることを明らかにするよう求めているので、別の項の留保で救う書き方はかえって無効になる典型です。音楽理論の講座の規約では、上限を定める一文そのものに限定の言葉を組み込む形にしました。同じ理由で、「法令の定める範囲内で」「法令上許される範囲で」という言葉も使わないことにしています。

条文例損害賠償の上限の条(事務所の書き方の要旨)

  1. 当方は、本契約に関して受講者に生じた損害について、当方、その代表者又はその使用する者(講師を含む。)の故意又は重大な過失による場合及び個人情報の漏えい等による場合を除き、受講者が当方に支払った受講料の額を上限として賠償する。
  2. 前項の規定は、受講者の生命又は身体が侵害された場合には適用しない。
  3. 当方が受講者に返金した額は、第1項の上限の計算において受講料の額から差し引かない。
  4. クーリング・オフ又は中途解約によって当方が返還する金銭については、第1項の上限を適用しない。

主語に「その使用する者」まで入れるのは、主催者だけを主語にすると、講師など使用する者の過失について一部免除の条項が無効と評価されるおそれがあるためです。

上限の額にも気を配ります。起業支援講座のレビューでは、軽過失に限っていても上限が著しく低ければ消費者契約法10条の検討は残ること、返還すべき受講料を賠償の上限で減らす構造にしないことを指摘しました。受講者の側の賠償責任を定める条も、事業者の責任の条と並べて読み、受講者にだけ重い責任や高額の負担を課す形になっていないかを確かめます(消費者契約法10条)。精神的な支援を扱うサービスでは、生命・身体の損害を低い上限で一律に制限することの相当性に慎重な判断が要る、とも説明しました。

成果を保証しない条項は、どこまで効きますか

「成果を保証しません」という条項は必要ですが、それだけで返金の請求や取消しを防げるわけではありません。Instagramのコンサル講座では、個別相談で使っていた「講座代金を回収するまで伴走します」という表現が契約書に定義されておらず、広告やトークと結びつくと、断定的な判断を示したとして取消しを主張されるおそれがある(消費者契約法4条1項2号)、成果を保証しない条項ではこれを防げない、と指摘しました。

事務所の改訂例 成果に関する条項を組み替えた例

伴走の約束

出発点「講座代金回収まで伴走」という表現のみ(契約書に定義なし)
改訂後継続サポートの条を新設。協力義務の履行・報告・規約違反がないことを条件に、チャット等で相当な範囲の助言を続ける。売上の達成は保証しない。講座生からの終了の申出、当社からの30日前の通知での終了、存続条項を定義

広告の言葉を、契約上の義務の範囲に置き換えました。

受講生の取り組み

出発点定めなし
改訂後講座生は指導に基づき自らの判断と責任で実践し、必要な情報を提供する。この義務を果たさず成果が得られなくても当社は責任を負わない、と協力義務の条を新設

成果は受講生の行動にも左右されることを、契約で明らかにしました。

合格の保証

出発点定めなし(説明では合格実績を強調)
改訂後合格できなかったことを理由とする返金や減額には応じない旨を明記

受験対策の講座で、成果と返金を切り離しました。

単価交渉の講座の最終報告書では、成果を保証しない旨や断定的な判断を示さない旨を書面で手当てしても、募集ページや体験談などの表示物の管理が生命線だとまとめています。表示の側の注意点は特商法表記と最終確認画面で説明しました。

「当社が不適切と判断した場合は解除できる」は有効ですか

事業者の主観だけで解除できる条項は、消費者の利益を一方的に害するとして無効とされるおそれがあり、紛争の場面でも使いにくくなります。起業支援講座の規約では、「すべての違反で直ちに解除」「信用の悪化など当社の判断で解除」「すべての契約・一切の債務について期限の利益を失う」という条項を、次のように組み替えました。是正できる違反は通知して10日以上の是正の機会を与え(10日は契約上の設定で、法律の最低日数ではありません)、重大な事由だけを客観的な要件で無催告解除の対象にし、解除の理由と効力の発生日を記録が残る方法で通知し、未提供分は精算し、法律上の解除や取消しの権利は妨げない、という形です。禁止行為の「不快感を与える行為」「当社が不適切と判断する行為」も、具体的な違法行為や妨害行為に限定し、外部のSNSのパスワードの提出や私的なアカウントへのアクセスを求める定めは削りました。成年後見の開始などの属性だけを理由とする拒否や当然の解除も削除しています。

子どもとの関係をテーマにした講座のレビューでは、「受講の継続が不適切と合理的に判断した場合」という条項について、相性が合わない、方針に疑問を述べた、返金について問い合わせた、といった事情では解除できないと例示し、客観的で合理的な根拠を要件にするよう求めました。個別コーチングの規約では、禁止事項を12の号に分けて列挙し、最後の「準ずる行為」の号は「是正を求めても是正されないもの」に限り、原則は相当の期間を定めた是正の催告の後に停止・解除、無催告解除は特定の号で態様が重大な場合などに限る、という構造にしました。受講者からの暴言や過大な要求に備えたカスタマーハラスメントの対応の条を新しく設け、解除のときの受講料の精算を条文で結びつけた例もあります。同業者が調査の目的で受講することをお断りする条を新設した子育てコーチングでは、表明保証、承諾の拒絶、無催告解除、返金は中途解約の条の準用、損害賠償の請求の留保を組み合わせました。

規約の内容を後から変えられますか

受講規約が民法の「定型約款」に当たる場合、変更が受講者の一般の利益に適合するか、契約の目的に反せず、変更の必要性、変更後の内容の相当性、変更することがある旨の定めの有無やその内容などに照らして合理的なものであれば、個別の同意なしに変更できます(民法548条の4第1項)。変更するときは、効力の発生時期を定め、変更すること・変更後の内容・効力の発生時期をインターネットなどで周知しなければならず(同条2項)、合理性による変更(同条1項2号)は、効力の発生時期までに周知しなければ効力を生じません(同条3項)。

事務所の改訂例 規約の変更の条を直した例

通知なしの変更

出発点「当社は通知なく本規約を変更できる」
改訂後効力発生日と周知の方法を定め、周知を経ない変更は効力を生じない形に

周知の要件を欠くと、変更の効力が生じないおそれがあります。

合理性の判断の要素

出発点548条の4第1項2号の要素を列挙しながら、「変更することがある旨の定めの有無及びその内容」が抜けている
改訂後要素を条文どおりにそろえる

条文の要素が一つ欠けるだけで、変更の合理性を説明する足場が弱くなります。

都合による変更

出発点「当社の都合により変更することがある」
改訂後重要な変更は個別に同意を得て、同意しない人は負担なく解約できる形に

「都合による」という文言だけでは要件を満たしたことになりません。

既存の受講者への影響

出発点変更後の規約を既存の受講者にもそのまま適用
改訂後受講料・期間・回数・クーリング・オフ・中途解約の条件は、既存の受講者に不利益に変えない。効力発生日の30日前までにサイトと個別の通知で周知

契約の中心部分を一方的に動かさないためです。

個別に結んだ受講契約書は、定型約款とは性質が違い、548条の4を持ち出しても受講料や期間を自由に変えることはできない、と注意した例もあります。講座の方法の変更(進行の仕方や使う外部サービス)は事前の通知でできるとしても、回数や時間を減らす変更には受講者の同意が要る、個別コーチングをグループに替える、ライブの講義をすべて録画配信に替えるといった本質の変更は変更権の範囲の外、と線を引いています。事業者の都合で講座を終える場合は、合理的な理由を要件にし、重要な変更は14日前までに個別に通知し、同意しない人は負担なく解約でき、連続して14日を超えて中断したら解約でき、恒久的に終了するなら30日前に通知して未提供分を返金する、と起業支援講座の規約で定めました。事業を譲り渡すときは、移転先と提供の体制を説明して同意を得る方式や、通知から30日以内なら手数料なしで解約できる定めを置いています。

未成年者から申込みがあったら、どうすればよいですか

未成年者が法定代理人の同意を得ないでした契約は、取り消すことができます(民法5条1項・2項)。「受講者が未成年者であるときは法定代理人の同意を要する。同意を証する資料を求めに応じて提出する」という定め方では、入金だけで契約が成立してしまい、同意の確認が後回しになります。そこで音楽理論の講座の規約では、成立の条に「受講者が未成年者であるときは、入金の確認に加え、法定代理人が同意する旨の署名、記名押印又は電子署名をしたことを確認した時に成立する」というただし書を置きました。同意を契約の成立の要件に組み込むことで、取消しのリスクを入口で抑える設計です。

受講者を18歳以上に限る講座も多く、メンタル面を扱う個別コーチングでは、取消しのリスクに加えて健康情報の取得や保護者への情報提供と守秘の関係が重なるため、コーチングは18歳以上に限り、動画の商品は保護者の同意を確認する表示で購入できる形にしました。一方、事務所が点検した講座の規約を見比べると、未成年者の扱いはばらばらです。法定代理人の事前同意がなければ登録を無効とするもの、同意のない申込みについて「責任を負いません」とだけ書くもの、未成年者が申し込めば保護者の同意があったものと「みなす」もの(民法5条の取消権との関係で実効性に疑問があります)などです。どの形を採るにしても、同意の確認の方法と、確認できるまで契約を成立させない仕組みを決めておくことが要点です。

管轄・完全合意など、標準の条項で気をつけること

管轄の条では、「事業者の所在地を管轄する地方裁判所を専属的な合意管轄とする」という書き方が多く見られます。消費者が遠方の裁判所でしか争えない形は、直ちに無効とまでは断定できないものの、問題とされやすいため、事務所では地方裁判所又は簡易裁判所の合意管轄としつつ専属的なものではないとし、受講者の住所地の裁判所の管轄を妨げない形にしています(民事訴訟法11条)。個別コーチングの原案は専属管轄を定めながら、契約書に事業者の住所がなく、管轄の裁判所を特定できない状態でした。家計管理サービスでは、「事業者の所在地を管轄する地方裁判所を専属的な管轄とする」を「受講者の住所地を管轄する地方裁判所又は事業者の所在地を管轄する地方裁判所」に改めています。海外の事業者が日本の消費者に講座を売る場合でも、消費者は日本の住所地で訴えることができ、外国の裁判所を専属とする合意の効力にも制限があります(民事訴訟法3条の4・3条の7)。

完全合意の条も書き方しだいです。「本契約書以外の合意はすべて無効」とすると、申込みのときに示した講座の内容まで否定しかねないと指摘し、契約書・申込画面・交付した講座案内を合意の範囲とし、その中の優先順位を整理するよう求めた例があります。美容系の講座の契約書では、完全合意の条を、法律が受講者に認める権利は制限しない形に改めました。語学講座のレビューでは、分離可能性、完全合意、通知、不可抗力、譲渡禁止、権利不放棄、存続、準拠法といった一般条項がほとんど欠けていて、紛争のときの防御が構造的に弱いと指摘しました。相殺は争いのない債務や確定した債務に限る、通知の到達は「通常到達すべきであった時」とする、講師本人の指導が契約の本質になっている講座では受講者の承諾なしに地位を移転しない、といった点も、標準の点検項目にしています。書類全体の構成はオンライン講座に必要な書類一式をご覧ください。

家計管理サービスの改訂版では、知的財産権、個人情報の取扱い、資格者の業務との切り分け、地位の譲渡の禁止、存続条項を新たに加え、反社会的勢力の排除の条には、属性についての表明保証と、違反したときの解除権を備えました。原案の通知の条が「法人の名称・代表者」を前提にした書き方になっていたため、個人の事業者に合わせて直しています。雛形から写した条項は、事業者の実態に合っているかを一条ずつ確かめる必要があります。

ヒヤリングの問いと理由 一般条項を整えるときに確かめること

  1. 講師やスタッフなど、主催者以外に受講者と接する人はいますか。

    賠償の条の主語に「その使用する者」を入れる必要があるかを決めるためです。

  2. これまでに受講者との間で起きた揉めごとや、解除を考えた場面はありますか。

    解除の事由を、実際に起きうる具体的な行為で書くためです。

  3. 規約を変更したことはありますか。既存の受講者にどう知らせましたか。

    定型約款の変更の手続と、既存の受講者に不利益に変えない項目を決めるためです。

  4. 18歳未満の受講者を受け入れますか。

    受講資格の定めと、法定代理人の同意を成立の要件にするかを決めるためです。

  5. 事業者の住所と、受講者が多い地域はどこですか。海外の受講者はいますか。

    管轄の条と、海外の受講者がいる場合の扱いを決めるためです。

起きがちなこと

よくあるご質問

「当社は責任を負いません」と書いておけば大丈夫ですか。

消費者との契約では、損害賠償の責任を全部免除する条項は無効です(消費者契約法8条1項1号・3号)。「故意・重過失を除き責任を負わない」も、軽過失なら全部免除と読めるため無効となり得ます。軽過失の場合に限って受講料を上限とするなど、限定した形で書きます。

損害賠償の上限を受講料にする条項はどう書けばよいですか。

上限を定める一文の中に、事業者・代表者・使用する者の故意又は重大な過失による場合を除く旨を書き込みます(消費者契約法8条3項)。別の項で「法令により制限できない場合は適用しない」と留保するだけでは足りません。生命・身体の侵害や、返金する受講料には上限を及ぼさない形が安全です。

成果を保証しないと書いておけば、返金を求められませんか。

それだけでは防げません。広告や個別相談で成果を断定的に伝えていれば、取消しを主張されるおそれがあります。成果に関する訴求を契約上の義務(たとえば一定の条件での無償サポートの継続)に置き換え、受講生の協力義務とあわせて書いておくことが大切です。

「当社が不適切と判断した場合」に契約を解除できる条項は有効ですか。

事業者の主観だけで解除できる条項は、消費者の利益を一方的に害するとして無効とされるおそれがあります。解除の事由を具体的な違反行為で書き、是正できる違反は催告と是正の機会を与え、解除のときの精算も定めておきます。

未成年者から申込みがあったら、どうすればよいですか。

法定代理人の同意のない未成年者の契約は取り消すことができます。受講対象を18歳以上に限るか、受け入れる場合は、法定代理人の署名などで同意を確認した時に契約が成立する、と成立の条に組み込む方法が安全です。

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